森からの手紙


森からの手紙:平成19年/早春号


一人からの出発


                             宮 司  阪井 健二

 いつもお世話になりましてありがとうございます
 さて私がこの土生神社の宮司に就任して四年になろうとしております。
 この三月で今期町会役員の任期が満了となりますが、この三年間山口町会長様のもと町会役員の皆様をはじめ関係者の皆様にはこれまでにも増して神社に対して熱心に取り組んで戴きました。お蔭様で地域の神社・氏神様に対する地域の人達の関心も高まり、徐徐にですが、お参りされる人も増えてきているように思います。皆様のご尽力に対し心より感謝申し上げます。ありがとうございます。

 土生神社はこの広い土生町一町だけの氏神様としておまつりされている地域の守り神様です。一町だけでこれだけ立派な氏神様をおまつりしているところは他にあまりないと思います。
 地域の神社にもっともっと光をあて、一番身近でいつも氏神様が見守って下さっているということを知って戴きたくて、いたらないなりに私はこの四年間奉仕させて戴いてきました。
 極力お宮を留守にすることがないように、昼間は出来る限りに拝殿に座って一人でも多くの参拝者の方にご挨拶をするようにも努めて参りました・
 氏神様の存在の大切さに気づき、この地域の歴史と伝統に心を寄せることを通して先行き不安なこの国の未来への生きる力をささやかでも地域から育てたいと願ってきました。
 しかし多くの人に支えられてあるお宮とは言え、無能な私、まして一人では気持ちだけあってもなかなか皆様の期待にも応えられず、その上一人での生活ですので仕事に集中しようとすれば家事が山積みになり、生活が荒れ仕事にも悪影響を及ぼすという悪循環になってしまいます。
 その無理が早くも限界に来て、昨年から体調をずっと崩し、最近医者から思いもかけない宣告を受け愕然としました。
 大切な氏神様のお宮をお預かりしながら私の不徳で申し訳ないことですが、当分の間無理をせず心身をなるべく休めてこれからのお宮のことや自分自身の人生のことを見つめ直してみたいと思います。
 そしてこれからこのお宮が地域の神社としてより発展し地域に暮らす人々に限りない力を与えるお宮として未来へ引き継がれていきますように今後も微力ながら努めていきますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

 昨年末からベーチェット病という難病を患っている一人の若い人と出会いがあり、現在彼は失職中なので、時折神社に来て戴いて年末の掃除などをして戴いています。
 初め彼が来た時一本のラベルの貼っていないペットボトルを持ち歩いていて、何を飲んでいるのかなと思いましたが、それが流動食だと知ってびっくりしました。何度も手術して腸が短くなっており、厳しい食事制限の中で生きているのでした。
 一月下旬その彼を誘って大阪のギャラリーいくとくで開催されている南正文さんの日本画展に出かけました。
 南さんとは私は学生時代から交流がありますが、南さんは小学三年生の時製材業を営むお父さんのお手伝いをしていて機械のベルトに巻き込まれ両腕を失われました。十四歳の時、やはり堀江の六人斬りという悲惨な事件で両腕を失ない生涯を身体障害者の指導と社会福祉活動に当たられた大石順教尼に出会って師事。口で筆をくわえて絵を描く努力をされ日本画家となられたのです。
 今回の個展は久しぶりで、八十号の桜の絵など大作が並んでおり、仕事も人生も充実しておられることがうかがえましたが、南さんも大病を患い一度は死を覚悟したところを乗り越えての今回の個展とのことでした。
 そして難病の彼と三人でしばらくお話をする中で、南さんから最近ベストセラーになっている新谷弘実著「病気にならない生き方」の話が出され、南さんも新谷先生の治療法と同じ治療法によって病気が改善されてきたとのことで、この本の一読を薦められました。私は帰りに早速その本を購入し読んでみましたが、すごい本でした。
 今まで私も無農薬の野菜のこととか少し関わったことがありましたが、自分の食生活などはむちゃくちゃでした。そんなことを一人の生活で考える余裕などなかったのです。しかし新谷先生の本を読んで食べ物の大切さを痛感しました。
 人間の臓器の働きというものは神様の働きに等しく、特に腸の働きを人間が意識してみることは大切で人間が欲望だけで食べた物でも健康を維持出来るように働いて下さっているのです。私がむちゃくちゃな食生活で毒になるものを次から次に送り込んでも、それを拒否することも出来ず何とか健康を保つようにひたすら働いていて下さるのです。そんなことを今まで一度も考えたことはなく、この本によって初めて気づかされ涙がこぼれそうになりました。
 食べるということは神様にお供えするような気持ちで正しい食事をすることが大切なのだと教えて戴きました。
 ただ欲望だけで食べてはいけないのですね。生きていることに感謝の気持ちで戴く、そのためにはどんなものを食べるかも考えることが大切なのですね。
 私事ばかり書きましたが、自分の生活を少しずつ正し明るい人生を新しく作っていくことを通してこのお宮の発展に新しい命をこめていきたいと願っています。今後ともご指導ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。